省エネ住宅
とは

About Low-energy house

1あなたのお住まいのあちこちに
「暑さのわな」も・・・!?

毎年のように、「この夏は記録的な暑さ」といわれるようになりましたが、
日本の夏の平均気温はここ100年で1.16度上昇しています。実際に、夏に熱中症により病院に搬送される方が増えているなどのニュースをテレビでよく目にするようになりました。

日本の夏平均気温偏差
【出典:気象庁「日本の季節平均気温」をもとに作成】

でも、そのテレビを見ているあなたのお住まいが最も暑い、、、こんなこと感じていませんか?
実は最も熱中症が発生しているのは「おうちの中」ということがわかっています。

熱中症の発生場所
【出典:総務省消防庁 熱中症による救急搬送人員に関するデータ(年齢区分別搬送人員・初診時における
傷病程度別搬送人員・発生場所ごとの項目別搬送人員(平成29年~))をもとに作成】

2「暑さのわな」の原因は?

2-1 住宅の熱が一番多く出入りするのは窓です

住宅の中で熱が一番出入りするのは窓です。つまり窓の断熱性能が低いと、冬は室内から熱が逃げ、夏は外から熱が入って来てしまいます。これまでの住宅の多くは断熱性能が低い窓ガラス・サッシが設置されており、冬は寒く、夏は暑い家になってしまっています。
また、室内温度が同じでも、断熱性能が不十分な家は外の温度を室内に伝えてしまうため、体感温度は室内温度よりも上がります。

【出典:横浜市建築局『なっとく!省エネ住宅を選ぶべき6つの理由』】
【出典:横浜市建築局『なっとく!省エネ住宅を選ぶべき6つの理由』】
【出典:横浜市建築局『なっとく!省エネ住宅を選ぶべき6つの理由』】
【出典:横浜市建築局「なっとく!省エネ住宅を選ぶべき6つの理由」をもとに作成】

2-2 日射熱が暑さの原因

夏は、特に日射による熱が暑さの原因となります。断熱性能が高い家でも、一度屋内に日射熱を取り込んでしまうと、断熱性能が高いゆえに熱が逃げず、室内は暑いままになってしまいます。

特に窓から入る日射は、室内を暑くします。

2-3 住宅は隙間だらけ

住宅は完全に密閉された空間ではありません。目には見えませんが壁と床、壁と壁、壁と天井といった部材の接合部には小さな隙間があります。この隙間が多いとどんなに高性能な断熱材や窓を設置しても、外部との熱の出入りが発生し、性能が発揮できません。
これまでの住宅は気密性能が低く、隙間から熱が出入りしているので、隙間風が発生する、エアコンの効きが悪くなるなど、住環境に悪影響を及ぼしています。

3健康リスクも

3-1熱中症

熱中症となる原因には、猛暑日などの気候や激しい運動のほか、「自宅で窓を開け、冷房なしで生活する」などがあります。「家の中だし、このぐらいの暑さなら大丈夫」という油断が熱中症事故発生につながっているのです。

熱中症は軽症で済むこともあれば、重症化し死亡してしまうこともあります。
エアコンを適切に使用していれば防ぐことができるケースもあると思いますが、「電気代が高いから」「エアコンの風が気になるから」といった理由で、エアコンの使用を避ける方も多いのではないでしょうか。

熱中症による緊急搬送情報(令和6年度神奈川県)
【出典 グラフ:総務省消防庁 熱中症による救急搬送人員に関するデータ
(年齢区分別搬送人員・初診時における傷病程度別搬送人員・発生場所ごとの項目別搬送人員(平成29年~))をもとに作成】
【出典 絵:厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト】

3-2脳梗塞

脳梗塞は、血圧が上昇しやすい冬に多い病気といわれていますが、国立循環器病センターの調査によると、脳梗塞は夏も冬と同じくらいの割合で発症することがわかっています。
その主な原因とされるのが、脱水症状です。夏は汗をかくため、気付かないうちに体内の水分が不足がちになります。そうすると血液の流れが悪化し、血管が詰まりやすくなるのです。

季節ごとの脳梗塞患者割合
【出典 グラフ:『脳梗塞は冬の病気? 夏の病気?』国立循環器病研究センターをもとに作成】
【出典 左図:日本生活習慣病予防協会 ホームページをもとに作成】
【出典 右絵:日本医師会 ホームページ 】

3-3騒音

断熱・気密性が低い家の場合、家から音が漏れ、外からの騒音が入ってきます。ご近所トラブルや寝るときに外の音が気になるなど、ストレスがたまる原因になります。

4断熱性能が低い住宅
建てられなくなります

住宅の断熱性能は「断熱等性能等級」によって表されます。2022年4月に等級5、同年10月に等級6と7が新設されました。
2022年4月まで最高等級だった等級4ですが、2025年には義務化されるため最低限の基準となり、2030年までに建築できない基準になる予定です。

5省エネ性能の高い住宅
どんないいことがあるのか

5-1熱中症から身を守ります

庇や断熱材により熱の侵入を防ぐことで、冷房室以外も快適な温度に保つことができます。
つまり、家中を少ないエネルギーで涼しくできるので、電気代を抑えつつ快適な環境を実現し、熱中症を予防します。

庇や断熱性能による室温度の違い

5-2脳梗塞の予防の一つにも

夏だからこそ、水分補給、生活リズム、室温管理等が脳梗塞予防のため気を付けることとされています。
室内が暑いと発汗が増え、睡眠中に脱水状態となってしまうので、寝ている間の室温管理が重要です。断熱性に優れていれば、就寝前にエアコンを切っても緩やかな室温変化とすることができ、適切な室温管理につながります。

断熱性能が低いと部屋が徐々に暑くなり、寝汗をかく。断熱性能が高いと室温があまり上がらず、快適な睡眠ができる。

5-3「音」を気にせずに生活できます

家の中の生活音や外からの騒音は、ストレスやトラブルの原因になります。省エネ住宅にすることで、この問題はかなり解決できるのです。その理由は、壁などに設置した断熱材と、気密性の高い窓。これらが音も遮断・吸収してくれます。

適切に断熱された住宅
【出典:横浜市建築局『なっとく!省エネ住宅を選ぶべき6つの理由』】

5-4防災性も兼ね備えます

断熱・気密性能の確保に加え、太陽光発電や蓄電設備などの設置により、自立的にエネルギーを確保することで、災害時における停電時などにも一定程度生活が継続できます。

【出典:横浜市住生活マスタープラン2022
【出典:横浜市住生活マスタープラン2022-2031】

6これからの省エネ住宅
どんな性能か、どう実現するか

断熱・気密性能が高い住宅はどのように実現するのでしょうか。性能を理解し家づくりを考えましょう。

6-1 まずは断熱

「断熱」とは、熱の行き来を遮断することです。外壁に高性能な断熱材を用いたり、断熱性の高い窓(樹脂製のサッシにトリプルガラスを用いた窓など)を採用することで、住宅の断熱性能を高めることができます。断熱性能を高めて熱の行き来を遮断すると、壁や窓を通して家の中に伝わってくる外気温の影響を抑えられます。つまり、冬の冷たい外気や、夏の暑い外気の影響を受けず、快適な室温を保てるようになります。

住宅の断熱性能は「断熱等性能等級」によって評価されています。断熱等性能等級は地域ごとに定められた「UA値」によって評価されます。UA値(外皮平均熱貫流率)とは、「室内と外気の熱の出入りのしやすさ」を表したもので、この数値が低いほど熱が逃げにくい“高断熱な家”になります。

横浜市を含む6地域では以下のように基準が設定されています。

【国土交通省資料を基に作成】
【国土交通省資料を基に作成】

6-2 日射を遮る

夏の暑さには、断熱性能と合わせて暑さの原因となる窓からの日射熱を取得しないように、太陽高度などを考慮し適切な庇を設けることが重要です。

適切に庇を出すことで、日射熱を防ぐことができる

また庇の他に、遮熱性の高いガラスや外付けブラインドを使用することも有効です。夏期・中間期は断熱性能と合わせて遮熱性を高めることにより、冷房エネルギーの削減と窓付近の快適性向上を実現できます。

アルミ(複層ガラス)とAPW430(日射遮蔽型)の違い

遮熱性の高いガラスの効果

日よけなし vs シェード

シェードの効果

テラス席に影を落とす外付けブラインド

外付けブラインドのイメージ

【出典 左写真:YKKAP 窓の教科書】
【出典 中央写真:LIXIL 窓まわり|スタイルシェード ~サーモ動画の比較「日よけなし vs シェード」(音無)】
【出典 右写真:LIXIL スタイルシェード】

開口部の遮熱性指標として日射熱取得率があります。
日射熱取得率とは、外からの日射熱が開口部を通して室内にどれだけ入るのか、その比率を示します。夏期は、室内に日射熱を入れたくないので日射熱取得率は小さな数値が求められます。

庇・軒の有無、ガラスの種類、日射遮蔽物の種類別の日射取得率
【出典 グラフ:一般社団法人 建築環境・省エネルギー機構 発行『温暖地版自立循環型住宅への設計ガイドライン』をもとに作成】

6-3 適切に換気する

断熱材や庇等で熱の侵入を防いでも、徐々に暖かい空気は溜まっていきます。
階段室や吹き抜けの上部、ロフト等の高い位置に開口を設置し、夏は室内上部に溜まった暖かい空気を排出するといったような適切な通風を行うことが大切です。

適切な庇および断熱性能と暖かい空気を出す高い窓
通風と日射遮蔽の有無による消費エネルギーと断熱性能の違い
【出典 グラフ:一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会 著『HEAT20設計ガイドブック2021』をもとに作成】

6-4 気密も大切

断熱と気密の関係をクーラーボックスで例えるなら、「断熱」は本体の部分、「気密」は蓋のパッキンです。いくら性能の高いクーラーボックスでも、蓋のパッキンがなければ冷気がもれてしまい冷えません。
住宅においても、断熱性の高い窓の設置や、適切な断熱処理とあわせて、精度の高い建築部材や気密シート、気密テープなどで、可能な限り隙間を埋めていき、外気の侵入を防いで室内の気密性を高めることが重要です。
住宅の気密性能は「C値」という指標で表されます。C値は床面積1㎡あたりにどれくらいの隙間があるかを示したもので、この数値が低いほど隙間が少ない“高気密な家”になります。例えば延床面積45坪の住宅では、C値1.0の場合住宅全体で、はがき1枚分の隙間があることになり、C値5.0の場合は住宅全体で、はがき約5枚分の隙間となります。高さ90cmの腰高の窓が8cm開いているとはがき5枚分。8cmも窓が開いていたら閉めたくなりますよね。
住宅の隙間は換気に大きな影響を与えます。これからの住宅においては、C値1.0以下が良いとされています。C値は気密測定試験によって計測します。

【国土交通省資料を基に作成】
[隙間の考え方]
【国土交通省資料を基に作成】
[気密測定試験の様子]

6-5 リフォームでも性能向上できる

既存住宅やマンションでも窓の改修により、断熱・気密性能を高めることができます。

窓の断熱性を高める3つの方法

窓ガラスの交換
窓ガラスの交換

ガラスを断熱性の高い複層ガラス等に交換することで断熱効果を高めます。

樹脂サッシに交換
樹脂サッシに交換

窓のサッシを熱の伝わり方がアルミの1/1000である樹脂サッシへ交換する事で断熱効果を高めます。

内窓をもう一枚設置
内窓をもう一枚設置

窓の内側にもう一枚窓を取り付け二重にすることで断熱効果を高めます。

【出典:横浜市建築局『なっとく!省エネ住宅を選ぶべき6つの理由』】

7よこはま健康・省エネ住宅推進
コンソーシアムとは

2050年までの脱炭素社会の実現に向けて、本コンソーシアムは、最高レベルの断熱性能(断熱等性能等級6及び7)や気密性能を備えた「省エネ性能のより高い住宅」が当たり前となるよう、確かな技術力と高い発信力を持った事業者の皆様とともに、市民の皆様の意識醸成を図り、行動変容につなげることを目的として発足しました。

本コンソーシアムでは、「健康」「快適」「経済性」「防災性」を兼ね備える「省エネ性能のより高い住宅」の効果等のきめ細やかな情報提供、新築・改修時の相談対応、設計・施工者の技術力向上の支援等を総合的に支援します。

よこはま健康・省エネ住宅推進コンソーシアムとは