省エネ住宅
とは
1あなたのお住まいのあちこちに
「寒さのわな」が・・・!?
冬、暖房しても足もとや窓際が寒い。夏、冷房を付けても室温がなかなか下がらない。
家の中でも暖房している部屋から、扉1枚隔てた廊下や別の部屋に出ると寒暖の差が激しい── こんなこと感じていませんか。
リビングに対して、扉1枚挟んだ廊下の温度は10度以上の差が。
(廊下側から暖房で暖めたリビングと暖房していない廊下を撮影)
暖かい空気は軽いため部屋の上の方に溜まってしまい、断熱性能が低いとその熱がそのまま
外へ逃げてしまいます。また、窓辺で冷やされた空気が、下降気流となり足元へ流れ溜まっていく コールドドラフト現象により、足元はいつまでたっても暖まりません。2「寒さのわな」の原因は?
2-1 住宅の熱が一番多く出入りするのは窓です
住宅の中で熱が一番出入りするのは窓です。つまり窓の断熱性能が低いと、冬は室内から熱が逃げ、夏は外から熱が入って来てしまいます。これまでの住宅の多くは断熱性能が低い窓ガラス・サッシが設置されており、冬は寒く、夏は暑い家になってしまっています。
また、室内温度が同じでも、断熱性能が不十分な家は外の温度を室内に伝えてしまうため、体感温度は室内温度よりも下がります。
2-2 住宅は隙間だらけ
住宅は完全に密閉された空間ではありません。目には見えませんが壁と床、壁と壁、壁と天井といった部材の接合部には小さな隙間があります。この隙間が多いとどんなに高性能な断熱材や窓を設置しても、外部との熱の出入りが発生し、性能が発揮できません。
これまでの住宅は気密性能が低く、隙間から熱が出入りしているので、隙間風が発生する、エアコンの効きが悪くなるなど、住環境に悪影響を及ぼしています。
3健康リスクも
室内外に温度差があると、身体にはどんな影響があるのでしょうか。
3-1アレルギー疾患の原因に
室内外の温度差によって結露が発生します。結露はカビやダニの発生原因と言われており、それらを吸い込むことでアレルギー症状を引き起こすことがあります。
部屋のあちこちが
ジメジメカーテン、押し入れの中などがジメジメしたり、窓がびしょびしょだったり…...。そんな結露の水分は、さまざまな悪影響の元凶です。
放置しておくと
カビやダニが
常に湿っぽい状態になるとカビが発生し、胞子を餌にダニが発生します。そのフンや死骸も餌となり、ますます増殖していきます。
健康を損なう
要因にも
カビやダニが大量発生すると空気中に胞子やフンなどが浮遊し(ハウスダスト)、それらを吸い込みアレルギー症状を引き起こすことがあります。
3-2ヒートショック
冬の場合、暖かくしているリビングから寒い脱衣所や浴室に入ると血圧が急上昇し、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす危険性が高まります。さらに、浴槽のお湯につかると今度は血圧が急降下し失神を引き起こす恐れがあります。
3-3騒音
断熱・気密性が低い家の場合、家から音が漏れ、外からの騒音が入ってきます。ご近所トラブルや寝るときに外の音が気になるなど、ストレスがたまる原因になります。
4断熱性能が低い住宅は
もうすぐ建てられなくなります
住宅の断熱性能は「断熱等性能等級」によって表されます。2022年4月に等級5、同10月に等級6と7が新設されました。
2022年4月まで最高等級だった等級4ですが、2025年には最低限の基準となり、2030年には建築できない基準になる予定です。
5省エネ性能の高い住宅は
どんないいことがあるのか
室内温度が一定になると、快適で健康な生活を送ることができます。
5-1アレルギーを遠ざけます
室内外の温度差を小さくできるので、結露を減らしカビやダニの発生を抑制。アレルギー性疾患の原因を減らすことができます。また、暖かな住まいで暮らす幼児は活発になり、病欠が減るという研究結果もあります。子どもが健康でいられれば、看病のため保護者が仕事を休まなくてもよくなります。省エネ住宅は、ご家族の健康をも支えているのです。
5-2ヒートショックから身を守ります
住宅内の各部屋の温度差を小さくすることで、血圧を安定させることができ、ヒートショックのリスクを減らすことができます。
5-3家中が同じ温度なら、あちこちで過ごしやすく
冬は窓際や足もとの温度が低くなり、暖房器具が無い廊下などは特に寒くなります。だから冬の脱衣所では服を脱ぐのも億劫になりがち。高断熱の住宅なら、極端に寒い・暑い部屋をなくすことが可能。住宅設計の際も、細かいスペースに区切る必要が無いので、開放的なプランにすることができます。
5-4「音」を気にせずに生活できます
家の中の生活音や外からの騒音は、ストレスやトラブルの原因になります。省エネ住宅にすることで、この問題はかなり解決できるのです。その理由は、壁などに設置した断熱材と、気密性の高い窓。これらが音も遮断・吸収してくれます。
5-5防災性も兼ね備えます
断熱・気密性能の確保に加え、太陽光発電や蓄電設備などの設置により、自立的にエネルギーを確保することで、災害時における停電時などにも一定程度生活が継続できます。
6これからの省エネ住宅は
どんな性能か、どう実現するか
断熱・気密性能が高い住宅はどのように実現するのでしょうか。性能を理解し家づくりを考えましょう。
6-1 まずは断熱
「断熱」とは、熱の行き来を遮断することです。外壁に高性能な断熱材を用いたり、断熱性の高い窓(樹脂製のサッシにトリプルガラスを用いた窓など)を採用することで、住宅の断熱性能を高めることができます。断熱性能を高めて熱の行き来を遮断すると、壁や窓を通して家の中に伝わってくる外気温の影響を抑えられます。つまり、冬の冷たい外気や、夏の暑い外気の影響を受けず、快適な室温を保てるようになります。
住宅の断熱性能は「断熱等性能等級」によって評価されています。断熱等性能等級は地域ごとに定められた「UA値」によって評価されます。UA値(外皮平均熱貫流率)とは、「室内と外気の熱の出入りのしやすさ」を表したもので、この数値が低いほど熱が逃げにくい“高断熱な家”になります。
横浜市を含む6地域では以下のように基準が設定されています。
6-2 断熱だけでは足りない
断熱と気密の関係を防寒着で例えるなら、「断熱」は生地の部分、「気密」はジッパーです。暖かい生地の防寒着を着ていても、ジッパーが全開では暖かくなりません。
住宅においても、断熱性の高い窓の設置や、適切な断熱処理とあわせて、精度の高い建築部材や気密シート、気密テープなどで、可能な限り隙間を埋めていき、外気の侵入を防いで室内の気密性を高めることが重要です。
住宅の気密性能は「C値」という指標で表されます。C値は床面積1㎡あたりにどれくらいの隙間があるかを示したもので、この数値が低いほど隙間が少ない“高気密な家”になります。例えば延床面積45坪の住宅では、C値1.0の場合住宅全体で、はがき1枚分の隙間があることになり、C値5.0の場合は住宅全体で、はがき約5枚分の隙間となります。高さ90cmの腰高の窓が8cm開いているとはがき5枚分。8cmも窓が開いていたら閉めたくなりますよね。
住宅の隙間は換気に大きな影響を与えます。これからの住宅においては、C値1.0以下が良いとされています。C値は気密測定試験によって計測します。
6-3 リフォームでも性能向上できる
既存住宅やマンションでも窓の改修により、断熱・気密性能を高めることができます。
窓の断熱性を高める3つの方法
窓ガラスの交換
ガラスを断熱性の高い複層ガラス等に交換することで断熱効果を高めます。
樹脂サッシに交換
窓のサッシを熱の伝わり方がアルミの1/1000である樹脂サッシへ交換する事で断熱効果を高めます。
内窓をもう一枚設置
窓の内側にもう一枚窓を取り付け二重にすることで断熱効果を高めます。
7よこはま健康・省エネ住宅推進
コンソーシアムとは
2050年までの脱炭素化「Zero Carbon Yokohama」の実現に向けて、本コンソーシアムは、
最高レベルの断熱性能(断熱等性能等級6及び7)や気密性能を備えた「省エネ性能のより高い住宅」が当たり前となるよう、 確かな技術力と高い発信力を持った事業者の皆様とともに、市民の皆様の意識醸成を図り、 行動変容につなげることを目的として発足しました。本コンソーシアムでは、「健康」「快適」「経済性」「防災性」を兼ね備える「省エネ性能のより高い住宅」の効果等のきめ細やかな
情報提供、新築・改修時の相談対応、設計・施工者の技術力向上の支援等を総合的に支援します。【参考】用語集
文中で出た専門用語を最後にまとめて解説
UA値(外皮平均熱貫流率)は「室内と外気の熱の出入りのしやすさ」を表したものです。
この数字が低いほど熱が逃げにくい“⾼断熱な家”になります。
断熱等性能等級では、全国の気候条件の違いに応じて1~8の地域に区分して、それぞれに基準が定められています。
C値とは、住宅における相当隙間面積のことです。建物全体にある隙間面積(㎠)を延床面積(㎡)で割った数値で、建物の気密性能の指標として用いられています。
細いガラス繊維が絡み合い構成された綿状の物質です。抱え込んだ空気が移動しにくくなることにより断熱効果を生み出すものです。高性能グラスウールのガラス繊維は通常のグラスウールよりも細く、より空気が動きにくくなるため、高い断熱性能を発揮します。末尾の16Kや20Kの記号は、ガラス繊維の密度を表し、数字が大きいほど断熱性能が高い事を示します。
一般的なグラスウールはビニールパックされたものを仕上げ材の裏に敷き詰めるのに対し、吹込み用グラスウールは現場で天井や壁の裏側にグラスウール繊維を直接ブローイング機械で詰め込みます。断熱部位にコンセントボックスや配管などの凸凹部があっても、隙間なく断熱材を充填することが可能になり、より気密性が増すという特徴があります。
細かい気泡でできた発泡体の断熱材です。耐水性に優れ、板状で適度な硬さをもっているため加工しやすく、グラスウールなどの柔らかい断熱材が経年で垂れ下がり劣化する恐れがあるのに対し、長期間に渡って安定した性能を発揮する特徴があります。
フェノール樹脂を発泡させ、微細な気泡に高断熱ガスを密閉することで高い断熱性能をもつ断熱材です。ポリスチレンフォームより高性能で、薄くても十分な断熱性能を持ち耐火性にも優れています。
アルミ樹脂複合サッシは、外側が耐久性に優れたアルミニウム、内側が断熱性に優れた樹脂で構成されています。外部の熱や冷気を室内に伝えにくくなり、冬場は結露を防ぐ効果もあります。
樹脂製サッシは、窓の枠が全て樹脂でできている窓です。アルミ樹脂複合サッシよりもさらに優れた断熱性能と気密性能を持ちます。樹脂ならではの部材同士の密着性により、遮音性能に優れていることも特徴です。
ガラスは鉱物のため、それ自体に断熱性能はほぼありません。複層ガラス(ペアガラス)はガラスを2枚向かい合わせに設置し、間に中空層を設けて断熱効果を狙ったものです。 A9や G12などの記号が付きますが、Aは空気層、 Gはアルゴンなどの封入ガス層を示します。数字は中空層の厚 み ㎜)で、厚いほど断熱効果は高まります。
ガラスを3枚使用し中空層を2重にしたものが三層複層ガラス(トリプルガラス)です。さらに断熱効果が向上しますが、開閉が重くなるというデメリットもあります。
Low-Eガラスとはガラス表面に金属膜をコーティングしたものです。金属膜の効果で日射熱を吸収あるいは反射し、夏の暑さを和らげ、さらに冬の暖房効率を高める効果があります。